ライブ配信されたバレエ「ペンギン・カフェ」がTwitterトレンド入り

新国立劇場バレエ団「ペンギン・カフェ」バレエ鑑賞のいろは
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2021年の幕開け公演で、新国立劇場バレエ団で上演される予定だった「ニューイヤーバレエ」は、直前のPCR検査で関係者に陽性者が出たことで、中止になってしまった。

仕方がない、誰のせいでもない、とはわかっているけれど、やはり公演が中止になるのは当事者も観客も辛い。私は毎年「ニューイヤーバレエ」を楽しみにしていて、早々にチケットを買ってたから、中止と聞いた時は意気消沈。2020年3月の「マノン」が公演途中で中止になり、観ることができなかった悪夢を思い出した。

ところが、新国立劇場バレエ団の新芸術監督、吉田都さんの英断なのか、無料でライブ配信されることになった。こんなことはコロナ前には絶対にあり得なかった!!バレエ芸術を広く一般の方々に普及する方法として、オンライン配信はすごく良いと思っていたから、上質なバレエを多くの人たちに見てもらえる機会が増えるのは本当に嬉しい。

大人バレエの生徒さんたちにも、このライブ配信をおすすめして、みんなで一緒にオンラインで繋がりながら観たらすっごく楽しかった!

アーカイブしないライブ配信で15万人が鑑賞

新国立劇場バレエ団の公演が無料でライブ配信されるなんて前代未聞だし、アーカイブされないのならば、バレエファンは何がなんでもその時間を空けて観たはず。「ニューイヤーバレエ」といえば、バレエ団のプリンシパル(トップダンサー)たちが集結して色々な作品を見ることができるガラ公演だから。→HI NT

ガラ公演」とは?

通常、バレエ公演で上演される作品の中で主役は一人か二人。だから、プリンシパル(バレエ団内で最高位のダンサー)は、交代で出演する。観客は、誰が主演するか、誰がどんな役を踊るか、によって観に行く日時を決めることが多い。
一方ガラ公演は、物語のある作品を1つ上演するのではなく、いろんな作品の見せ場だけを集めたハイライト公演なので、各作品でプリンシパルが総出演することが多い。つまりプリンシパル全員を観ることができる宝石箱のような公演なのだ。

私はYoutubeで観てたけど、視聴者数がどんどん増えていった。Facebookで配信していたのも合わせると、最終的に世界中から15万人以上の人たちがオンラインで同時に観ていたらしい。これぞオンラインの凄さ。劇場に入る観客数の比ではないし、エリアも世界中の人たちが日本時間に合わせて観ていたのが素晴らしい。

最初にバレエファンがペンギンカフェについてツイートしたところ、
「ペンギンカフェって何?」と思った人が検索して、バレエ作品だということに気づき、
ライブ配信している映像を観て、「こんな面白いバレエがあるんだ」ってツイートして、
さらにバレエファンが「絶滅した動物だけがノアの方舟に乗れない」という結末を解説し、
バレエファンに限らず、たくさんの方々がライブ配信された「ペンギン・カフェ」を観て、感想をツイートしてくれて、トレンド入りしたみたい。

劇場で観る臨場感は味わえないし、舞台の隅から隅まで自分の好きなところは観られないかもしれないけど、バレエの魅力を多くの人たちに伝える方法としてはすごくいい。しかもバレエは言葉がないから、言語の壁もない。

コロナで嫌なことはたくさんあるけれど、バレエ鑑賞の新しい形が作り上げられて、観る人の選択肢が増えるのはとても良い。高いチケット代を支払って交通費をかけて劇場へ行くことが特別な楽しみだと感じる人もいるし、たくさんの作品をオンラインで家で見る人もいる。劇場へ行くことができない人にもバレエが観られるチャンスも広がる。たくさんの人に見てもらう機会が増えることは、バレエ芸術が普及するためには絶対に必要なことだから、コロナが収まってもオンライン配信は続けてほしい。

バレエ「ペンギン・カフェ」とは

「ペンギン・カフェ」は、1988年に英国ロイヤル・バレエで初演されました。振付は、デヴィット・ビントレーさん。2010年から4年間、新国立劇場バレエ団の芸術監督を務められた方です。

音楽は、サイモン・ジェフス。80年代に一大センセーションを巻き起こしたワールド・ミュージック・アンサンブル「ペンギン・カフェ・オーケストラ」の音楽を使用しています。

可愛らしい動物の仮面を被ったダンサーたちが、ポップで心地よい音楽で楽しそうに踊りますが、この作品の根底には、痛烈な文明批判と現代の環境問題にも通じるメッセージが含まれています。

あらすじ

ペンギンがウエイターをしているカフェで、人間とペンギンが楽しそうに踊っているところから始まります。そこへいろいろな動物たちが来て、さまざまな踊りを披露します。

  1. ペンギン(グレート・オーク)=オオウミガラス
  2. ユタのオオツノヒツジ
  3. テキサスのカンガルーネズミ
  4. 豚鼻スカンクにつくノミ
  5. ケープヤマシマウマ
  6. 熱帯雨林の家族
  7. ブラジルのウーリーモンキー

最後にフィナーレで雨が降り始め、止むことのない大雨に動物たちは絶滅の危機にさらされながら、ペンギンに導かれてカフェの外へ逃げてゆきます。ノアの方舟が現れ、そこへ動物たちは乗り込みます。しかし、ペンギンだけは乗ることはありません。なぜなら、絶滅してしまったから・・・。

人間によって絶滅してしまったオオウミガラス

国立科学博物館に展示されているオオウミガラスについての説明を引用します。

よちよちと日本足で歩くペンギンは、南半球に生息する飛べない水鳥で、動物園や水族館の人気ものです。しかしペンギンと言う名前は、もともとは全く別の鳥、今回のバレエの主人公をウミガラス(学名 Penguinius impennis)につけられた名前でした。後に見つかった南半球の鳥が小海ガラスに似ていたので、そちらにもペンギンと言う名前がついたのです。

飛べない鳥を生みガラスは、かつてはカナダ東部、グリーンランド、アイスランド、そしてスコットランドにかけての岩だけの島々で、夏に大きな群れを作って子育てをしていました。しかし、この習性はオオウミガラスを狙う人間にとって好都合なものでした。

人々は数百年にわたってオオウミガラスを捕獲し続けました。肉や卵は食用になり、羽毛はマットレスの詰め物になりました。そのため19世紀の初めごろには数が激減してしまいました。しかしその後も保護される事はなく、さらに希少価値が出た卵や羽毛を目的としたハンターに殺され、たった1つ残っていた卵も割られて絶滅してしまいました。

オオウミガラスは、自然環境の悪化などによって絶滅したのではなく、人間による乱獲によって姿を消した鳥なのです。

国立科学博物館

「ペンギン・カフェ」の最後は、オオウミガラスがみんなをノアの方舟に導きますが、自分は乗ることなく、かわいらしくも悲しげに踊りながら舞台に取り残されます。とても印象的で悲しく、なんとも言えない気持ちになります。
皆さんはどう感じるでしょうか?

いろんなダンスが観られる

「ペンギン・カフェ」の大きな魅力の一つが、いろいろなダンスを観られるということでしょう。バレエダンサーたちは、トウ・シューズで踊るだけではなく、さまざまな踊りを踊ることができるのです。

  1. ペンギン(グレート・オーク)=オオウミガラス
    社交ダンス風のステップで、ペンギンの可愛らしい歩き方をしながら踊る。
  2. ユタのオオツノヒツジ
    ミュージカル映画黄金時代のシアタージャズ風。バレエとタップが基本のショースタイルの踊り方。
  3. テキサスのカンガルーネズミ
    手で足を叩くハンガリーの民族舞踊とブレイクダンスを混ぜたような楽しい踊り。
  4. 豚鼻スカンクにつくノミ
    イギリスのフォークダンス。英国の農村に伝わるモリスダンスがベースになっている。
  5. ケープヤマシマウマ
    アフリカンな打楽器のリズムに合わせたモダンダンスと、ヒールを履いたモデルのような女性たちの踊り。最後に銃声が響いて雄のシマウマは死んでしまう。
  6. 熱帯雨林の家族
    ゆったりとした時の流れの中で子育てするアボリジニの親子の踊り。
  7. ブラジルのウーリーモンキー
    ラテンアメリカのカーニバルのような雰囲気で楽しく踊られる。

今一度考えたい「SDGs」

「ペンギン・カフェ」は、動物たちの踊る姿を観られる楽しい作品ですが、その根底には人類による「環境破壊と絶滅」が大きなテーマとなっています。振り付けをしてデヴィット・ビントレーさんは、「エンターテインメントとして楽しんでほしい」と語っています。バレエという芸術作品を楽しみながら、人間として地球の中でどう生きていくか、ということを考えるきっかけになればいいのかなと思います。

日本でもSDGsと言われ始めて久しく、言葉がだいぶ一般化されてきているけれど、今一度考えてみたいと思う「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」。今生きている絶滅危惧種の動物たちを生かすも殺すも、私たち人間の生き方にかかっているのです。

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