バレエ「くるみ割り人形」のあらすじと解説

ワイノーネン版「くるみ割り人形」バレエ鑑賞のいろは
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クリスマスプレゼントにもらったくるみ割り人形が素敵な王子様に変身して、お菓子の国へ連れて行ってくれる!…という夢物語と、アットホームなクリスマスの雰囲気が、幸せな気持ちにさせてくれるバレエです。
クリスマスシーズンになると、世界中のバレエ団が上演する人気演目です。

あらすじ

原作はドイツの作家ホフマンによる「くるみ割り人形とねずみの王様」ですが、フランスの作家デュマが脚色翻訳した「くるみ割り人形の物語」をもとにバレエの台本が作られたようです。ホフマンの原作にはドイツ的な暗い幻想が、デュマの改作にはラテン的な明るさがあります。

登場人物

クララ:シュタールバウム家の少女
フリッツ:クララの兄
ドロッセルマイヤー:魔術師、人形使い
くるみ割り人形:ドロッセルマイヤーがクララにプレゼントする
コロンビーヌ/アルルカン
/ムーア人:機械仕掛けの人形
ねずみの王様:ねずみの大群を率いて真夜中に現れる

王子:ねずみの王様に呪いをかけられ、くるみ割り人形の姿にされる
お菓子の精:お菓子の国の住人達
金平糖の精:お菓子の国の女王

第1幕

クリスマス・イヴの夜。降りしきる雪の中、シュタールバウム家のクリスマス・パーティーに、美しく着飾った招待客が次々と訪れます。大広間には立派なクリスマス・ツリーが飾られています。

ドロッセルマイヤーが、ぜんまい仕掛けの人形を踊らせて子供たちを喜ばせ、クララにくるみ割り人形をプレゼントします。不恰好な人形ですが、クララはとても気に入ります。

やがてパーティーが終わり、来客が帰路につく時間になりました。クララも人形を大広間に置いて自分の部屋に戻ります。

みんなが寝静まった真夜中、クララはくるみ割り人形が気になって、こっそり大広間に戻ってきます。時計が12時を告げると、ツリーがみるみる大きくなり、ねずみの大群が現れます。

おもちゃの兵隊を率いたくるみ割り人形も登場して、ねずみと戦いますが、勝てそうにありません。ついにねずみの王様とくるみ割り人形の一騎討ちが始まってしまいます。クララはくるみ割り人形を助けるため、とっさの機転でねずみを撃退。
くるみ割り人形は美しい王子に姿を変え、クララにお礼を言います。

いつしか辺りは雪の精たちが美しく舞う銀世界になり、クララと王子はお菓子の国へと旅立ちます。

第2幕

お菓子の国にたどり着いた2人。金平糖の精が出迎え、クララを讃えます。そしてお菓子の国の饗宴が始まります。スペイン、アラビア、中国、ロシア、フランスのお菓子の精たちが、次々に楽しく美しい踊りを披露します。優雅な花のワルツの踊りに続き、最後は金平糖の精と王子が素晴らしい踊りを披露してくれます。
やがてクララは目を覚まし、すべては夢だったことを知って、かたわらのくるみ割り人形を抱きしめるのでした。

みどころ

第1幕の踊りとしては、コロンビーヌとムーア人の人形振りがテクニックを必要とし、見応えがあります。真っ白なチュチュを着た雪の精たちによる白いバレエ(コール・ド・バレエ)が、ハイテンポな「雪片のワルツ」を踊る場面は幻想的です。

白いバレエ」とは?

白い衣裳を着たコール・ド・バレエのこと。美しく揃って見せなければ主役に目がいかなくなるため、常に全方向に神経を配って踊らなければならない難しさがあります。コール・ド・バレエを観れば、バレエ団のレベルが分かるとも言われます。
白いバレエは「くるみ割り人形」の他、「白鳥の湖」や「ラ・バヤデール」、「ジゼル」、「レ・シルフィード」などでも観ることができます。

第2幕のお菓子の国のディヴェルティスマン(楽しみ、気晴らしという意味。ストーリーの一部でありながら、話の筋には直接関係のない踊りのこと)は、各国の民族舞踊が取り入れられていて、多彩な踊りを楽しめます。
続く「花のワルツ」は、大きなクリスマスケーキの飾りのお花のような、優雅で美しいコール・ド・バレエが見られます。
最後に金平糖の精と王子が踊るグラン・パ・ド・ドゥは、華やかで格調の高い踊りで、このバレエの最大の見せ場。金平糖とはドラジェというフランスの高級菓子のことで、アーモンドを糖衣掛けしたものです。金平糖の精のヴァリエーションは、チェレスタの響きに合った細やかな足捌きの気品がある踊りです。

お菓子の国のディヴェルティスマン

スペインの踊り(チョコレート)
陽気なカスタネットや華やかなトランペットの音に合わせた躍動感のある舞。
アラビアの踊り(コーヒー)
エキゾティックな衣裳と音楽、しなやかな動きが魅惑的。
中国の踊り(お茶)
機敏な跳躍や回転が印象的な、煌びやかで楽しい踊り。
ロシアの踊り(トレパック=大麦糖の飴)
テンポの速い音楽にのせて、コサックダンスに似た活発な踊りを披露。
葦笛の踊り(仏/ミルリトン=アーモンドタルト)
笛を持ち(振付による)、優美
軽やかに舞う、ディヴェルティスマンの要。

音楽

チャイコフスキーが作曲。「白鳥の湖」「眠れる森の美女」とならび、チャイコフスキー三大バレエといわれています。
「くるみ割り人形」の音楽は、振付家プティパが書いた台本と作曲注文書をもとに作曲しているので、音楽から物語の進行が直感的に伝わるような、表現の豊かさが魅力です。

真夜中にクリスマスツリーがどんどん大きくなっていき、異次元の夢の世界が開ける場面は、繰り返される旋律がクレッシェンド(だんだん強く)していくドラマティックな音楽です。
ねずみの王様との戦いの後に、くるみ割り人形が美しい王子の姿になる場面は、音楽もハープを使っていて美しくロマンティックです。
金平糖の精のヴァリエーションは、不安感を醸し出す和音を甘美な響きのチェレスタで演奏していて、もうすぐ覚めてしまう夢の儚さを演出しています。

ヴァージョン紹介

イワーノフ版

1892年にマリインスキー劇場でバレエ作品として初めて上演され、「雪片のワルツ」が好評だったようです。イワーノフ版をもとに演出を変えて、牧阿佐美バレヱ団やK-BALLET COMPANY、小林紀子バレエシアターなど、今も多くのバレエ団で上演されています。
クララ役を子供が演じることが多く、大人と子供が一緒になった暖かい和やかな雰囲気の舞台を楽しめます。

ワイノーネン版

1934年にマリインスキー劇場で初演。マリインスキー・バレエ団東京バレエ団のレパートリーになっています。
主人公の少女の名前はクララがおなじみですが、ロシアではマーシャです。大人のダンサーがマーシャ役を踊り、そのマーシャが夢の世界で金平糖の精となって踊ることで、物語と踊りの両面で主役を一致させています。
ワイノーネン版は後世の改訂版の規範となりました。

ピーター・ライト版

1984年に英国ロイヤル・バレエ団が初演、現在もレパートリーになっています。
ホフマンの原作を活かし、くるみ割り人形はドロッセルマイヤーの甥がねずみの王様の呪いにかかった姿という設定。また、幻想の世界はクララの夢ではなく、ドロッセルマイヤーの魔法によるものという演出です。イギリスらしい繊細なドラマが展開されます。
クララ役を大人のダンサーが踊り、金平糖の精は別の大人のダンサーが踊ります。ドロッセルマイヤーの甥と王子もそれぞれ違うダンサーが踊ります。

イーグリング版

2017年に新国立劇場バレエ団が初演、現在もレパートリーになっています。この版では、ドロッセルマイヤーの甥・くるみ割り人形・王子を一人三役で演じます。そしてワイノーネン版のように、クララが夢の世界で金平糖の精となって踊ります。
ねずみの王様の存在感が大きく、主演ダンサーには高度なパートナーリングが求められる振付です。

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