気ままにバルセロナ生活 #40

ぶらり旅
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バルセロナに燦燦と輝く太陽が戻ってくると、地元の人たちも活気づいてきます。
気の早いドイツ人たちが、もう観光に訪れ始めています。
日本の春も桜と新緑が美しい、この季節が好きですが、
人々がサングラスを掛け始め、楽しい笑い声が公園から聞こえてくる
バルセロナの春も大好きです。

時は少し遡ります。
3月5日、私はブダペストでの最後の試合、ユーロリーグを見ていました。
ハンガリートップのDomino BHSEとイタリア・セリエAのSistema Brescia。
Dominoは、ハンガリー代表選手がメンバーの半分を占めるというチーム。
一方Bresciaは、イタリア代表、セルビア・モンテネグロ代表、
クロアチア代表などが何人も所属するチーム。
この試合を見るために、私はバルセロナへ帰る日を延ばしたくらいです。
1時間以上前から会場には、ファンが押しかけ、テレビ放送の準備も万端です。
私はすぐ目の前にいるイタリア代表選手たちを見て、アテネを思い出しました。

ハンガリー国内リーグは、Dominoのような強いチームが沢山あるわけではないので、
必ずしも面白い試合が見れるということにはなりません。
残念ながら、私はDominoの選手たちが、必死に戦っている姿をあまり見たことがなく、
この試合で彼らがどんな風にプレーするのか、非常に興味がありました。
イタリアリーグには、多くの強いチームが集まっているので、
常にハイレベルな試合をしなければならないような環境にあります。
イタリアに世界の多くの優秀な選手が集まるのは、厳しい環境の中で活躍する事で、
自分の選手としての実力を伸ばすことができ、実績を認められ、
活躍に見合った報酬がもらえるからです。

Dominoは、この試合のために相当な準備をしてきたようです。
第一ピリオドから積極的に攻撃し、5得点します。
Bresciaは、退水誘発し、そのチャンスを逃さず全てゴールを決め、3得点。
第2ピリオドは、どちらも1得点ずつ。
6-4でDominoが一歩リードしたまま第3ピリオドへ突入し、
ここで一気に流れが変わりました。
Dominoが最初の1分でミドルシュートとカウンターを決め、8-4とします。
結局、この4点差が最後までつめられないまま、12-8でDominoの勝利。
Dominoのキーパー、Gergely Istvanの好セーブが素晴らしかったです。

Bresciaは、R.Calcaterraが怪我のためか、ほとんど出ておらず、
全体的にもあまり調子がいいとは思えませんでした。
しかし、スゴイのは、今回の8得点全てが退水時に決まっていることです。
最近の水球プレースタイルとしては、個々のテクニックがほとんど変わらないため、
どうやって退水誘発し、そのチャンスをいかにものにするか、
というところに重点が置かれています。
もちろん、それだけでは勝てないというのが、今回の結果からわかることですが…。

もう少し競った試合が見たかった、と贅沢なことを思いながら、バルセロナに戻り、
2日後(3月10日)にはマドリッドに向かいました。
女子世界選手権欧州予選を見るためです。
ブダペストでは、ずっと女子代表の練習を見学させてもらい、
Farago監督はじめ、多くの方にお会いする機会を得ました。
その彼女たちが出場する大会であり、
久し振りにスペインの選手たちとも会いたかったので、
スケジュールとしては、ちょっとハードだなと思いつつ、応援に行きました。
参加国は、ウクライナ、オランダ、スペイン、チェコ、ドイツ、
ハンガリー、フランスの7ヶ国で、この中から上位4ヶ国が、
7月にモントリオールで行われる世界選手権に出場することができます。
私は、この大会6日間のうちの最後の3日間だけ観戦しました。

3月11日と言えば、昨年マドリッドでテロが起こった日です。
マドリッドの交通の中心となっているアトーチャ駅周辺の近郊線で、
同時に爆発が起こり、多くの人々が犠牲になり、それは悲惨な事件でした。
その時、私はバルセロナにいましたが、テレビや新聞で事件の惨状を見るたびに、
目を覆いたくなるような気分でした。
ちょうど一年後に当たるこの日は、スペイン中が犠牲者の冥福を祈り、
二度とこの様な惨い事件が起こらないよう、テロリストたちへの呼び掛けが行われ、
マドリッドの王宮では、セレモニーがありました。
当たり前にある平和の価値を考えさせられる瞬間でした。
水球の試合の前も、全員で1分間の黙祷を捧げました。

さて、注目はやはりオランダ、ハンガリー、スペインの三ヶ国。
オランダは、女子水球のメッカと言われながら、アテネ出場を逃し、
次の世界選手権には必ず優勝を目指してくることは、間違いありません。
そして、スペインも昨年からじりじりと実力を伸ばしてきており、
アテネ出場はならなかったものの、注目すべきチームの一つです。
ハンガリーは、アテネで思うように結果が残せず、その思いを晴らすべく、
モントリオールではメダルを目標にしています。
予想通り、この3チームは、素晴らしい試合を展開しました。

・オランダ9-8スペイン(3-2,3-3,1-2,2-1)
スペインには、非常にいいキーパーがいるため、
フィールダーの選手たちが伸び伸びプレーしているのがわかる。
オランダは、大柄の選手が多く、当たりも激しい。
フローター中心のがっちりとしたプレースタイルを持っている。
一方、スペインはとにかく泳いで、ボールを回して得点を重ねる。
最終ピリオドの残り1分まで同点。とてもいい試合だった。

・準決勝 スペイン8-9ハンガリー(3-2,2-3,2-3,1-1)
スペインチームには勢いがあった。ハンガリーが負けるのではないかと思ったほど。
しかし、この日のハンガリーチームは、Farago監督の指示をきっちりと守り、
体制が崩れなかった。退水ゾーンの守備が全く崩れなかった。
スペインのJ.Pareja選手は、スターターとして4回ともボールを取り、
この試合で5得点している。素晴らしい活躍だった。
残念だったのは、ホームで試合をしているためか、
国際試合とは思えない態度がスペイン選手たちに見られたこと。

・決勝 ハンガリー6-7オランダ(1-4,1-1,2-2,2-0)
第1ピリオドで、いきなりオランダが4得点。
それで焦りが出たのか、ハンガリーはFarago監督の指示通りの攻撃ができず、
退水ゾーンも決められず、3点差をつめることができない。
練習で何度も繰り返した退水時の攻撃が全く機能しない。
最終ピリオドで、偶然のように入ったロングシュートとミドルで2得点し、
何とか1点差で試合を終えた。

客席で、スペイン代表選手たちに会いました。
3位という成績で、モントリオールへの切符を手にした彼女たちは、
とても嬉しそうにはしゃいでしました。

Farago監督は、試合後に必ず私のところに来てくれ、
その日の試合について話してくれました。
スペインチームに関しては、もう少し攻撃のバリエーションが増えるといいね、と。
選手は悪くないけれど、いつも同じパターンで攻撃しているから、
それを止められると何もできなくなってしまうから、とおっしゃっていました。
一緒に観戦していると、Farago監督のところへ話しかけてくる人が沢山いました。
その一人が、スペインでレフリーの勉強をしていると言う南米人でした。
9月からハンガリーに行くから、その時はよろしくお願いします、
といった内容をスペイン語で話し、
Faragoさんは、そんな彼に優しく笑顔で、9月に待ってるよ、と答えていました。
イタリア語の分かる人はスペイン語もなんとなく分かるのです。
私は、ふと昨年末の自分の姿を思い出しました。
あの時出会ったのが、Faragoさんでなければ、
私はここまで、ハンガリー水球には近づけなかったでしょう。

会場には、ハンガリー水球連盟の会長と役員の方々もいらしてました。
Kemeny Ferenc氏(男子水球監督Kemeny Denesの父)も私を覚えてて下さり、
強化部長のJakob Zoltan氏は、6月のUNICUMカップにブダペストに戻ってくれば、
私を試合に招待するとおっしゃって下さいました。
たったの3ヶ月間のブダペスト滞在で得たものは、本当に大きかったです。
言葉が分からず、苦労したことも、Kemeny氏にいきなり怒鳴られたことも、
今や良い思い出です。
6月に私はブダペストに戻ります。

のんびりいろんなものを見て、
いろんなことをやって、
いろんな人と出会って、
バルセロナを生きましょう。

*にーあや* 感想をお待ちしています

Macky!メールマガジン「Viva Barcelona!」
発行者名:ni-aya
水球に魅せられて早や2年。世界水泳をきっかけに、バルセロナまで来てしまいました。 2年間ここで水球観戦しながら、のんびりスペイン生活を自由気ままに満喫します。スペインが好きな人、水球を知りたい人、バルセロナに興味がある方はぜひぜひご覧あれ!!
2004年のアテネオリンピックをきっかけに、水球が国技のハンガリー・ブダペストに魅せられて移住。日本へ一時帰国するのをやめて、そのお金をブダペスト生活に注ぎ込み、マジャール水球を自由気ままに満喫しています。

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