昨日、6時間かけて抗がん剤投与した後、どんな体調の変化があるかと思っていたけど、今のところ大きな変化なし。
3人部屋の病室で、隣が夜中に何度もケアが必要な患者さんがいらっしゃり、機器のエラー音とベッドの昇降音と、看護師さんがケアをしにくる度におしゃべり好きの患者さんの声で目が覚めた。1時くらいから朝方4時までほとんど眠れなかった。昨日の父の病状を聞いて、今後の自分の体でどうやって介護していこうかと不安ばかりが募ってしまい、余計に眠れなかった。
大きな副作用は無い
気持ち悪くなるとか、動けなくなるほどだるいとか、想像していたようなことは起きない。まだそこまで抗がん剤の効果が出るほど時間が経ってないってことだろうけど。とりあえず今は、抗がん剤に含まれる成分によって、急なアレルギー反応は起きなかったってことだと思う。
小さな変化としては、お腹が空く感覚があまりなくて、食事が楽しくなくなったことと、肩関節が少し痛いことくらい。関節痛が出ることもあるけど、3日間くらいで収まるらしい。
あと気になったのは、腹腔鏡手術の傷口の痛みはもう消えているのに、お腹のあちこちがたまにピリピリ・チクチクすること。腹膜播種の痛みかな? 我慢できないほどの痛みではない。
良かったことは、前よりも尿が出るようになったこと。入院してからずっと尿量を測ってきたけれど、今までは体の水分がどんどん腹水に漏れ出ていたみたいで、とにかく尿が少なくてお腹が張って苦しかった。まだ腹水が完全になくなっているわけではないけど、だいぶ萎んできたように思う。
あれ?もしかしてこのお腹はもはや腹水ではなく、脂肪なのか? 動けるようになったら、早くレッスンしてウエストを作らなくては!!
これから徐々に抗がん剤の効果で細胞分裂が阻害されてDNA合成が抑えられていくから、何かしらの症状が出てくるはず。
TC療法とは
私が受けている抗がん剤治療は、TC療法と言って「パクリタキセル」と「カルボプラチン」という2種類の抗がん薬を組み合わせた治療法。卵巣癌や肺癌に対する標準治療として広く行われているものらしい。私のような遺伝性の「高異型度漿液性癌」には効きやすいと言われている。これで少しでも癌細胞が小さくなってくれることを祈る!
大学で生物学を学んでいたこともあり、体の中でどんなことが起こるのかを調べないと気が済まない。いったいどういう仕組みで、この薬たちが癌細胞を小さくするというのか?
パクリタキセル
パクリタキセルは、イチイ科の針葉樹植物のタイヘイヨウイチイ(学名:Taxus brevifolia)の樹皮の成分を原料として半合成された化合物で、後に樹皮中の内生菌がパクリタキセルを合成していることが発見されたらしい。
植物由来の成分だと聞いて、薬の原点を感じたというか、自然の中から生まれている薬だってことになんか感動した。
パクリタキセルは水にほとんど溶けない成分なので、ポリオキシエチレンヒマシ油とエタノールで溶解されている。エタノールが入っているので、私のようにアルコールに弱い体質の人は、パクリタキセルを投与すると、酔っ払ったような感じになってしまうんだ。それと、ポリオキシエチレンヒマシ油のアレルギーが出る人が多いので、抗アレルギー剤は必ず事前に投与する必要がある。
また、パクリタキセルをアルブミンに結合させた製剤が「アブラキサン」で、私の父が胃癌の抗がん剤治療として使っていた。父も私も同じ成分の抗がん薬を投与されていたんだ!
同じ成分なのに、どっちを使うかは、どうやって決めているんだろうか? 今度、先生に聞いてみよう。
パクリタキセルの働き
パクリタキセルは、細胞が分裂する時に必要な細胞構成成分の一つである「微小管」を安定化させることで、微小管の動きを抑制し、正常な細胞分裂の進行を妨げる。その結果、癌細胞の増殖を阻害する、という仕組み。癌細胞だけを狙って細胞分裂を防ぐことはできないので、正常な細胞分裂も妨げられる。だから、骨髄の働きが抑制されて、白血球や好中球が減って免疫力が低下したり、貧血になったり、血小板が減って出血しやすくなったりする。末梢神経の働きが悪くなって手足が痺れたりする。
ところで、微小管ってなんだっけ?
生物学を学んだくせに、言葉だけ知ってて中身をすっかり忘れている。細胞の中に存在する小さなチューブ型のもので、細胞が分裂をするときに、細胞の両極に微小管が発現し、染色体を2つに分ける働きをするもの、というのが簡単な説明か。
微小管は、チューブリンというタンパク質の集合体で、細胞分裂をするときにチューブリンが重合して微小管を形成し、細胞分裂の役目を終えると脱重合して分解される。
パクリタキセルは、このチューブリンを安定化させて重合を促進し、脱重合をさせない働きをする。すると、分解するはずのチューブリンが残ったままで細胞分裂が完了できないために、その細胞は死滅していく。これが癌細胞を細胞分裂を抑制することになる。
逆に、チューブリンの重合を阻害する薬剤(コルヒチン)は、種無し果実を品種改良する時に使用われる。細胞分裂をコントロールすると、癌細胞を死滅させたり、種無しスイカができたりするってことか。
パクリタキセルがどうやってチューブリンを安定化させるのか、というところまで深く掘り下げて調べてみると面白いのだけれど、マニアックすぎるのでこの辺でやめておく。興味のある方は調べてみてください。人間の体にとってタンパク質はとても重要なんだな、ということを改めて実感した。
カルボプラチンについては後日調べてみる。
家族との電話
午後にシャワーを浴びてさっぱりした。昨日はさすがに6時間の点滴で疲れて、そのまま寝たから気持ち良くなった。その後、夕方に妹と甥っ子とLINE電話で話をした。妹は毎日メッセージをくれる。ありがたい。甥っ子の漢字の宿題を一緒にやって、終わったご褒美にチーズケーキを頬張る姿を見て笑った。離れていても、顔を見て電話できる時代で良かった。これだけでも本当に元気が出る。
明日の私はどんな体調になっているのかな?
この卵巣癌闘病に関するブログは、私個人が感じたことや体験したことを思うがままに書き、自分の記録として残しているものです。治療の方法や方針・考え方・症状などは、病状や癌の種類・個人の体質によって様々ですので、コピーや転載はご遠慮下さい。
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