気ままにブダペスト生活 #50

ぶらり旅
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8月20日は、聖イシュトヴァーンの日というハンガリーの祝日です。
西暦1000年に、彼がハンガリーの国王として戴冠した日なのです。
今日は、あちこちでイベントが行われ、ジャズライブ、プロペラ機のショー、
夜は盛大にドナウ川で花火が打ち上げられます。
この花火の間は、どの橋も路面電車、車ともに通行止めとなり、
とにかくたくさんの人が橋の上、ドナウ川沿いの道を埋め尽くします。
隅田川の花火大会みたいなもんですね。
久し振りに見る美しい花火に、日本を懐かしく思い出しました。

モントリオール世界選手権からブダペストに帰ってきて、一週間も経たずに、
私はセルビア・モンテネグロへ旅立ちました。
ベオグラードで行われたWorld League Super Finalを見るためです。
さすがの私もこのハードスケジュールには、少し疲れましたが、
陸続きの隣国で行われている国際試合を見ないわけにはいきません。
世界トップレベルの選手たちが、いかに多忙なスケジュールをこなしているか、よく分かりました。

ちょうど偶然にも、富山の水球チームがハンガリーとセルビアへ遠征していると聞き、
図々しいとは思いながらも、ブダペストに来たときに合流させてもらいました。
富山で水球を教えている、セルビアのNovi Sad出身のコーチ、Pabkov Slobodan氏が、
この遠征を企画し、元所属していたVojvodinaというクラブチームの協力を得て、
日本の若い選手たちに、海外遠征を経験してもらおうというものです。
水球は経験のスポーツですから、若いうちに世界の水球を見たり、体験したりすることは、
とてもいい効果を発揮すると思います。
遠征中に南アフリカのチームと一緒になり、普段、勉強していてもほとんど使わない英語を使ったり、
見たこともないヨーロッパスタイルの水球を体験したり、
ベオグラードまでWorld Leagueを見に行き、世界一のHUN-SCG戦を観戦して、
フローターみたいなごついゴールキーパーを見たり、フローターテクニックに感動したり、
一万人以上の観客たちのブーイングや応援に驚いたりして、
とてもいい体験をしていました。

私がセルビアへ来たのは、今回で2回目です。
2月の極寒の中、舟崎選手を見に来て以来になります。([No.37-05.02.16] 気ままにBudapest生活参照)
この国に来ると、いつも歴史と宗教のことを考えさせられます。
モントリオールで、クロアチア対セルビア・モンテネグロの試合を見たとき、
お互いのブーイングで国歌がかき消されるほどでした。
それほど、嫌いなのか?憎いのか?

富山チームとは別に、一人ベオグラードへ向かった私を出迎えてくれたのは、
2月に日本人の友人を通して知り合ったセルビア人のNemanja(ネマニャ)くん。
今回の旅は、彼の協力なしでは有り得ません。
ホテルの予約から、試合の情報収集、ID取得までの交渉、観光案内など、
彼の流暢な英語で、私の不安を取り除いてくれました。
イタリアに3ヶ月ほど語学留学していたため、今はイタリア語も話せます。
来年、日本に行きたいと思っている、という彼は、日本語も少しずつ勉強中。
国際派の彼に、私は思い切って、いろいろな質問を投げかけてみました。
戦争のこと、宗教のこと、国民性のこと、今のセルビアのこと…
私の片言の英語に付き合ってくれ、たくさん話してくれました。
水球会場で、観客のブーイングを聞きながら、彼は困ったような顔をして、
「まだ戦争が終わってから日が浅い。僕は、こういうやり方をいいと思わないけど、
 クロアチアやボスニアのことをよく思ってない人はたくさんいる。時間が経てば、
 変わっていくと思う。」と言っていました。
若い人たちは、どんどん外へ出て、いろんな情報を持ち帰ってきています。
そして、今のベオグラードには、新しい建物が建ち、海外の企業が介入し、
ニューベオグラードと呼ばれる地域まで、開発が進んでいます。
観光客も年々増えています。
富山チームが滞在していたノビサドも、今は世界で2番目に新しい建物が建設されているところだそうです。
「今はビジネスチャンスがそこらじゅうに転がっている」
とNemanjaは目を輝かせながらニューベオグラードを指差して言いました。
これから目覚しく変わってゆくセルビアを、彼のような若い世代が担ってゆくのでしょう。

World Leagueは、すでに予選、準決勝が6月上旬から各地で行われ、
その結果、勝ち残った6チームのみが、このSuper Finalに出場します。
ギリシャ、ロシア、セルビア・モンテネグロ、クロアチア、ドイツ、ハンガリーが、
今年の出場チームです。
注目は、やはりセルビア・モンテネグロとハンガリーの因縁対決です。
セルビア戦は、4日間とも満席で、最終日の決勝は、プールサイドでの立ち見が出るほど。
「金メダルをもう一つ!!」という広告が、街のあちこちで見られました。
チケットは500ディナール(約1000円)。セルビア人にとっては、ちょっと高いかな。
世界選手権の金メダリストたちの試合が地元で見れると思えば、安いですね。
<結果>
8月11日
 GRE 8-10 RUS (2-3, 3-2, 0-0, 0-0, PS3-5)
 SCG 10-8 CRO (3-3, 2-2, 4-1, 1-2)
 GER 10-16 HUN (3-3, 2-5, 2-6, 3-2)
8月12日
 GRE 11-15 HUN (5-5, 4-4, 0-3, 2-3)
 SCG 10-8 RUS (3-0, 6-2, 0-4, 1-2)
 GER 8-15 CRO (3-3, 3-3, 0-5, 2-4)
8月13日
 GRE 4-8 CRO (0-1, 0-1, 3-3, 1-3)
 SCG 8-7 HUN (3-3, 3-1, 1-2, 1-1)
 GER 8-7 RUS (1-3, 2-1, 1-2, 4-1)
8月14日
 5位決定戦 RUS 9-14 GRE (0-2, 4-4, 1-4, 4-4)
 3位決定戦 GER 10-8 CRO (1-3, 1-2, 3-2, 5-1)
 決勝戦 SCG 16-6 HUN (4-2, 6-0, 3-2, 3-2)

セルビア・モンテネグロが優勝しました。
決勝戦のハンガリーは、シュート決定率が悪く、26本打って6本しか入りませんでした。
Kemeny監督に話を聞いたところ、すでに北京オリンピックを目指し、
若い選手を連れてきているということでした。
確かにKasas.T, Kiss.G, Molnar.T, Fodor.R選手といった、
モントリオールで活躍した主要選手は居ませんでした。
SCGはもちろん、金メダリストたちばかり。そうでなければ観客が納得しないでしょう。
決勝戦らしくない試合運びに、がっかりでしたが、世界選手権とは違う雰囲気を味わえて面白かったです。

アジア人が皆無の水球会場で、カメラを片手に練習と試合を見ていた私は、
ちょっと珍しい日本人だったようです。
いろんな人から声をかけられました。
その中で、「モントリオールでの日本チームのプレーは目覚しかった」というコメントを何度か聞きました。
「バルセロナ(2003年)の時に比べると、ずいぶん良くなっていて驚いたよ」と言われ、
嬉しくなりました。それから日本の水球の話をしたり、
セルビアやルーマニア、クロアチアの話を聞いたりして、本当に楽しかったです。

しばらく水球の大きな大会は、ありません。
忙しくてあっという間に過ぎた夏でした。
国内リーグが始まるのは10月です。それまで、ハンガリー語の勉強に集中します。
水球が見れなくて、寂しい気持ちですが、ゆっくり休んで、旅の疲れを癒そうと思います。
日本は、まだまだ残暑が厳しいでしょうから、どうか御身体ご自愛くださいね。

*にーあや* 感想をお待ちしています

Macky!メールマガジン「Viva Barcelona!」
発行者名:ni-aya
水球に魅せられて早や2年。世界水泳をきっかけに、バルセロナまで来てしまいました。 2年間ここで水球観戦しながら、のんびりスペイン生活を自由気ままに満喫します。スペインが好きな人、水球を知りたい人、バルセロナに興味がある方はぜひぜひご覧あれ!!
2004年のアテネオリンピックをきっかけに、水球が国技のハンガリー・ブダペストに魅せられて移住。日本へ一時帰国するのをやめて、そのお金をブダペスト生活に注ぎ込み、マジャール水球を自由気ままに満喫しています。

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