1995年10月に上演されたロドリゲス版「シンデレラ」は、男性ダンサーが義理の姉達を明るく演じ、踊りに重点が置かれているところが魅力です。また、振付家の音楽性の豊かさを実感できる作品です。
私は2幕のスターズの役として出演しました。
STAFF & CAST
【上演】1995年10月14日18:30・15日17:00 @メルパルクホール
【芸術監督】小林紀子
【振付】アルフレッド・ロドリゲス
【振付補佐】ジュリア・ファロン
【装置・衣裳】テレンス・エメリー
【照明】五十嵐正夫
【舞台監督】森岡肇
【作曲】セルゲイ・プロコフィエフ
【制作】小林功
メインキャスト
【シンデレラ】榎本佳代/加藤久美子
【王子】篠原聖一
【異母姉妹】田名部正治/丸岡浩
【仙女】志水礼子/楠元郁子
【継母】黒川千尋
【父】柴田進一
【道化】今田康二郎
STORY
第1幕
お母さんが死んでしまった、かわいそうなシンデレラの家に、父の再婚によって、まま母と義理の姉が二人、やって来ました。シンデレラは、この継母と姉達によって、だんだんと召使いのようになっていきました。
姉達は、けんかをし乍ら宮殿の舞踏会に着て行くショールに刺しゅうをしています。姉達が着替えの為、部屋を出ていった後、シンデレラは、自分が舞踏会に行けない事を思い悲しくなりました。そこへ、優しいけれども、気の弱い父がやって来て、シンデレラをなぐさめます。
再び部屋にもどって来た継母や姉達は、父とシンデレラをしかりつけます。その時、一人の老婆が現われ、食物を乞います。シンデレラは、老婆にパンをあげます。老婆はシンデレラを祝福して、その場を去ります。
やがて舞踏会用の洋服を持った洋服屋さんが、そしてダンスを教えに、ダンス教師が家にやって来ます。
家族の皆が舞踏会に行ってしまった後、シンデレラが、ほうきを相手に踊っていると、あの老婆が現れて、突然、仙女に変身し、四季の精を呼び出し、ねずみを小姓に、シンデレラには美しい舞踏会用のドレスや靴を、くれます。仙女は、夜中の12時迄に、必ず宮殿を去るように言います。シンデレラは魔法の馬車に乗って宮殿へと向います。
第2幕
きらびやかな宮殿の舞踏会に、シンデレラの家族達も到着します。やがて、王子も現れ舞踏会は、たけなわとなります。その時、シンデレラが到着します。そのシンデレラのあまりの美しさに、会場は一瞬、シーンと静まります。
王子は、この美しい娘をすっかり気に入って、踊りを申し込みます。二人は、お互いに愛を感じ乍ら、時のたつのを忘れてしまいます。時計が12時を打ち始めました。シンデレラは、ハッと我にかえって、慌てて、靴の片方を落としたまま、宮殿を去ります。
第3幕
第一場 宮殿にて
王子は、国中の靴屋を呼んで、この靴に見覚えのある人を探しましたが誰も知りません。
第二場 ディべルティスマン
そこで、今度は国中に住む外国の女性を集めました。スペインの女性、東方の国の女性、そして日本の女性も…、しかし、この靴に合う足の女性は見付かりません。
第三場 シンデレラの家
王子の一行が、やがて、シンデレラの家にも、やって来ました。姉達は靴を履こうとしますが無理です。姉が投げた靴がシンデレラにぶつかりそうになり、思わずシンデレラはもう片方の靴を落してしまいます。王子は、思わずシンデレラを見つめます。
第四場 エピローグ
妖精達は、シンデレラと王子を祝福し、二人は幸せになりました。
みどころ
小林紀子バレエ・シアター「シンデレラ」の公演プログラムに掲載されている対談より引用します。
ロドリゲス版の特長
継母の役を女性がやって、姉の役を男性がやるところなんかは特長のひとつでしょうね。(中略)それで、シンデレラをいじめるところをねちねちとやるようなことはなくて、むしろダンスの方に重点のあるさらっとした仕上がりが私は良い点だと思っています。温厚で、しかもユーモラスなところもあるロドリゲスさんらしい「シンデレラ」なんです。
小林紀子(小林紀子バレエシアター 芸術監督)
小林紀子バレエシアター第44回公演「シンデレラ」プログラムより
二人の出会いの表現というか、出会いの場の組立てがほんとうに情感豊かに出来ていると思います。出会いのシーンからしだいに親密の度合いが増して行く段階を細かく順を追って作っていることが分かります。しだいに興奮が高まっていく感じが自分で分かるんです。
榎本佳代(小林紀子バレエシアター プリンシパル)
小林紀子バレエシアター第58回公演「シンデレラ」プログラムより
音楽とお芝居がよく合っている
ロドリゲスさんの音楽に対する理解力のすごさを実感しています。(中略)特に第1幕のシンデレラの家の部分がおもしろいと思います。もちろんいかにもバレエらしい踊りの部分もすばらしいのですが、演技のために書かれている音楽がどのようにおもしろく個々の演技と関わっているかというところも注目していただきたいと思います。
小林紀子(小林紀子バレエシアター 芸術監督)
小林紀子バレエシアター第58回公演「シンデレラ」プログラムより
リハーサルの思い出
この年、私はバレエ団に入団するはずの年齢でしたが、大学進学を選びました。それでもスターズの一人としてキャスティングしていただけたことが、とても嬉しかったです。
以前の公演で、小学生だった妹がお小姓の子役としてキャスティングされていたことがあり、その頃からロドリゲス版「シンデレラ」は大好きな作品だったので、物語の中の一人として出演できることが大きな喜びでした。
ロドリゲスさんのリハーサル
とても丁寧に物語の背景や雰囲気を説明してくださっていたように記憶しています。私は2幕だけの出演でしたので、全部のリハーサルは見ていませんが、夜中の12時になる場面で、時計の針のように鋭く腕を動かすように注意されました。音楽のイメージと振付が本当にピッタリと合っているなと感じながら踊りました。
ロドリゲス版「シンデレラ」でとても印象的だった場面は靴探し。
第3幕の冒頭から王子の靴の持ち主探しの旅が始まる。他のバージョンの「シンデレラ」ではほとんどカットされてしまっていることが多く、王子が一生懸命シンデレラを探しまわり、世界のあちこちを駆け巡る場面が見られないのはとても残念。
靴職人たちに背負われた王子が、スペインやアラブ、日本などいろいろな国を回って行くところで、足をズンドコズンドコ踏み鳴らすようなステップを踏む振付が、プロコフィエフの音楽とピッタリ合っていて、少し滑稽な雰囲気を醸し出していてとても面白かった。アラブの国の首長役だった塩月さんの鞭の扱いがすごく上手だったのが忘れられない。
舞台で踊る
私の出番は少なかったですが、全体を通して「シンデレラ」のストーリーと同じように幸福感のある舞台でした。コール・ド・バレエ(群舞)が揃ってグラン・ジェッテをする振付があって、それがとても気持ちよかったです。
ロドリゲス版「シンデレラ」は、物語が細かいところまでとてもクリアで分かりやすく、振付も無理がなく音楽に合っていて踊りやすくて楽しかったです。衣装の彩りも豊かで、観てくださった方々にもダンサーたちの心地よい気持ちが伝わったのではないかと思います。
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